還暦を迎えて 

G 斉  藤   孝

 

 戦後四十有余年の歳月を経ました。我が輩、昨年人生の節目と言われる還暦を迎え、心を新たにして筆を執りました。

 医学部を卒業し、研修後十数年間、市井の開業医として医療に専念致しましたが、何かにつけて勉強と経験の不足を痛感し、心ならずも途中から軌道修正し、公立病院にて消化器専門医として研鑽、各科の実地研修中、今から約五年前から体調を崩し、厚生省認定特定疾患に罹患し、大学病院への入退院の繰り返し、闘病生活を経て、やっと、昨年六月から精神病院(管理者、内科担当)に、小康を得て勤務しておりますが、まだ療養中の体です。

 そんな事情で、ここ数年間、各種の会合にも欠席し、残念至極に思っておりました。

 最近は、しみじみと生き甲斐について考えることがあります。人間誰しも高齢者になりますと、細胞学的にも生物学的にも衰退期に入り、色々な体力の退行性変化、それに伴う疾病から逃避できません。究極は、体力、気力が衰え、精神的肉体的痴呆(ぼけ)がきても、化学療法や生活様式の改善等でどうにか生き永らえている事実が多々あります。

 生の延長だけでは人間を幸せにはしません。反対に不幸にする可能性もあります。目的は、生の延長に伴う充実感ではないかと考えられます。生の充実は、生きていることの幸せと、生きていること自体の充実感につきると思います。

 老人の健康は自己制御(セルフコントロール)の自覚が大切であり、結果は個人差があると思います,要は加齢とともに、脳の萎縮が進展するのはX線CTの結果でも明白です。

 人間は「年をとれば必ずぼけるか」とのQに対し、否と答えるしかありません。ぼけに関連した因子が、重要に影響しているものと思われます。それは性格、生活歴、環境、また血流を阻害する高血圧、糖尿病、喫煙等であります。一方、精神障害を促進する心理的、身体的因子は未だ明確でありません。とどのつまり、老化を制御してよりベターな健康状態を保持することにあります。例えば、具体的に食事によって潜在的な抵抗力を変えうるか、また適当な運動によって、良い結果を招くか、色々と試行錯誤を繰り返しながら、今後闘病生活と平行して、各種の試練にチャレンジして行く決意です。

 何となく纏まりのない意見を吐露して、申し訳なく思いますが、諸兄の賢察を乞う次第です。       (昭六二、五、一二記)

 

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